公務員制度
ラオスの公務員はすべて国家公務員であり、首相令第171号(1993年12月11日)で規定されている公務員、独自に管理規定を有している軍関係及び警察関係の公務員、並びに国有企業に勤務する公務員に分類されています。またラオスでは党組織及び党大衆組織に所属する者も公務員と見なされており、令171号の適用対象となっています。

 1995年に実施された公務員センサスによれば、ラオスにおける公務員の総数は7万人余。その内訳は、各中央政府の本省機関に勤務する者が11%、その地方出先事務所に勤務する者が82%、そして党中央組織や大衆組織、知事や郡長の事務所に勤務する者が約7%であり、地方行政に携わる者が全体の80%を占めています。また全体の50%が、人口の多いビエンチャン州、ビエンチャン特別市、サワンナケート州、チャムパサック州に配置されています。

 公務員の省別内訳を見ると、教員を含め教育省に所属する者が全体の60%、保健省に所属する者が13%、農林省に所属する者が6%、州知事及び郡長事務所に所属する者が6%、大蔵省に所属する者が3%となっており、ラオス行政における教育及び保健業務に力を入れている事が感じられます。

 年齢構成は全体の50%が30歳以下と若く、男女の比率は男性が64%:36%となっています。(この数値には日々雇用者や契約職員は含まれていません)

 国家全体の公務員制度に関する業務は、現在、党中央組織人事委員会(CCOP)が担当しています。

 令171号は、ラオスにおける公務員管理の最も包括的な規定とされおり、採用・管理・格付・昇進・規律・公務員の権利義務・懲戒・定年等が定められています。また令171号が適用される公務員は「省をはじめとする中央・地方の各公的組織及び在外公館において、常任勤務として採用または任命され、月給及び諸手当を国家予算から支給されている者」で、「各固有の管理規定を有する軍隊、警察、国有企業の職員や、日々雇用者、契約職員」については適用外とされています。

 公務員人事についても中央集中管理が原則であり、各大臣及び各州知事は配下に置かれた公務員の人事管理に責任を負っています。また省以下各公的組織はこの令171号を受けて個々の組織規則を制定しなければなりませんが、その公布にはCCOPの審議・承認を受けなければなりません

 公務員定数の管理は、省から州、村の組織に至るまで首相の権限となっています。またラオスの公務員は中央から郡レペルの職員までを指し、村長及び村組織に所属する者は国家公務員の扱いを受けていません。
公務員の義務
 全ての公務員は与えられた任務を責任感を持って履行し、法律及び公務員に関する規則、上位機関の下した命令には厳密に従わなければなりません。常に国家利益に忠実であり、国家秘密を守り、公務の信頼を確保する義務が課せられています。また公務員は特に任務として命じられる場合を除き、兼業は禁止されています。
公務員の権利
 公務員社会保障制度により、全ての公務員は自らの労働による対価を給料や住宅、手当、賞与等によって受け取る権利を有しています。休暇については年間15日の有給休暇の他に、病気休暇や産前産後休暇等の特別休暇があり、必要に応じ最長5年の無給休暇が認められる場合もあります。
 全ての公務員は、不当な告訴や中傷、脅迫や名誉殿損を受けることから保護されています。また責任感を持って任務を遂行している間に、事故により第三者に損害を与えた公務員も国による保護が与えられています。
採用
 公務員の採用手続は、各省・州・郡ごとに職員を採用しようとする省や事務所によって実施されています。ただし実際の採用については上位機関の審議・承認を得なければなりません。
 採用後の勤務・昇進・異動は基本的には同じ政府機関内で行われるため、各省間や州・郡間における職員の異動はほとんどありません。

【公務員の採用資格】
 公務員採用は、毎会計年度の第2四半期及び第4四半期に限って認められています。公務員として採用されようとする者は以下の条件を備えていなければなりません。
18歳以上のラオス人民民主共和国の国民であること
人民民主国家に忠実であること
良き国民であり、裁判所によって自由の拘束を宣告されたり、犯罪によって国家組織や国有企業から免職処分を受けていないこと
医療協議会から証明を受けた健康体の持ち主であること
道徳的に優れていること
その他採用機関の組織規則によって定められた事項をたしていること
格付委員会
 公務員の採用手続においては、採用後の給料や役職、昇進に大きくかかわる格付手続が重要となります。新規採用者の格付は、採用機関が設置する格付委員会の提案に基づき、CCOPによって承認されなければなりません。格付委員会の構成は以下のとおりとなっています。(各省及び省と同格の組織レベル)
省の大臣又はその職務代理者(委員長)
組織人事担当部の代表(副委員長)
採用しようとする局又は課の長(委員)
採用しようとする課や班からの熟練公務員(委員)
(各地方レベル)
州知事又はその職務代理者(委員長)
人事組織担当部の長又はその代理者(副委員長)
採用しようとする課又は班の長(委員)
採用しようとする課や班からの熟練公務員(委員)
格付
 公務員の格付の判断基準には2種類あり、受けた教育のレベルにより決定されるものと、現在又は過去の役職により決定されます。役職についての各付は、現在の公務員の高年層が高等教育を受けるべき年齢時に革命に参加し新体制を押し進める役割を担っていたため、若年層に対し低学歴傾向にある不均衡を是正するために設けられたものです。
 首相令第172号(1993年11月11日)が格付の分類を定めています。格付は全6級、各級ごとに15の区分(但し第6級については4区分)となっています。
判断基準・職名 1995年度
1 1〜15 初等一般教育を修了した者 5,691人
2 1〜15 中等一般教育を修了した者
初級専門教育を修了した者
28,666人
3 1〜15 中等専門教育を修了した者
高等教育機関において3年以下の就学期間を経た者
教員研修を修了した者
過去または現在の職が、州レベル事務所の副所長または省の課長等
(1975年以前より革命に参加しており、学業修了証の無い者に限る)
25,416人
4 1〜15 高等教育機関において3年以上就学した者
大学を卒業した者
過去または現在の職が、州党委員会の党員、郡党委員会の書記長(郡長)、省の局長・部長、州レベル事務所の所長、省の副部局長等
(1975年以前より革命に参加しており、学業修了証の無い者に限る)
10,585人
5 1〜15 6級の職務に再任されなかった者(党組織を含む)
4級から進級した者
66人
6 1〜4 大統領、首相、国家議会議長、
副大統領、副首相、大臣、国民議会副議長、最高人民裁判所長官、
最高人民検察院長官、知事、副大臣、副知事、党議長等
党中央委員会委員、党大衆組織議長、州党委員会書記長等
110人
 また令171号には、革命参加実績により公務員を下記の4つのカテゴリーに分類する規定もあり、格付を含め手当の支給基準に組み込まれている。
1954年以前の革命に関わった者
1954〜1975年12月2日の間に革命に関わった者
1975年12月2日以降に公務に就いた者
旧体制下から引き続き現在の公務にも就いている者
仮採用
 公務員に採用されようとする者は全て、採用時の格付によって3ヶ月から18ヶ月の仮採用期間を経なければなりません。格付が上位の級であればあるほど仮採用期間は長くなります。仮採用者には本採用者の基本給の95%が支給されています。
給与・手当
 基本の給料表は格付により6段階に分かれています。
1級 2級 3級 4級 5級 6級
  基本 手当
込み
基本 手当
込み
基本 手当
込み
基本 手当
込み
基本 手当
込み
基本 手当
込み
1 26,000 34,300 28,500 36,800 30,700 39,000 36,600 44,900 40,300 48,600 71,900 80,200
2 26,400 34,700 29,000 37,300 31,900 40,200 38,000 46,300 42,200 50,500 81,900 90,400
3 26,800 35,100 29,500 37,800 33,100 41,400 39,400 47,700 44,100 52,400 95,000 103,300
4 27,200 35,500 30,000 38,300 34,300 42,600 40,800 49,100 46,000 54,300 104,000 112,300
5 27,600 35,900 30,500 38,800 35,500 43,800 42,200 50,500 47,900 56,200    
6 28,000 36,300 31,000 39,300 36,700 45,000 43,600 51,900 49,800 58,100    
7 28,400 36,700 31,500 39,800 37,900 46,200 45,000 53,300 51,700 60,000    
8 28,800 37,100 32,000 40,300 39,100 47,400 46,400 54,700 53,600 61,900    
9 29,200 37,500 32,500 40,800 40,300 48,600 47,800 56,100 55,500 63,800    
10 29,600 37,900 33,000 41,300 41,500 49,800 49,200 57,500 57,400 65,700    
11 30,000 38,300 33,500 41,800 42,700 51,000 50,600 58,900 59,300 67,600    
12 30,400 38,700 34,000 42,300 42,900 52,200 52,000 60,300 61,200 69,500    
13 30,800 39,100 34,500 42,800 45,100 53,400 53,400 61,700 63,100 71,400    
14 31,200 39,500 35,000 43,300 46,300 54,600 54,800 63,100 65,000 73,300    
15 31,600 39,900 35,500 43,800 47,500 55,800 56,200 64,500 66,900 75,200    
※手当ては「生活費調整手当」です。

これに下記各種手当が加算されています。現在実施されている手当には以下のものがあります。
【職務給】
役職手当 首相令第173号(1993年11月11日)により、役職手当制度が設立された。大統領以下小学校長までの役職が10段階に分類されている。給料表の格付6級に属する者は最初の4段階に分類されており、手当支給の対象にはなっていない。5段階に分類される省の局長・部長クラスから月額8,000キープ、6段階7,000キープと続き、10段階に分類される郡の小学校校長、中学校の教頭、病院の副院長クラスでは、月額2,000キープが支給されている。
教職員・
医療職手当
首相令第176号(1993年11月25日)により、教職員及び医師に対しては、基本給の10%が加算して支給されている。他の業種に対する特別手当は今のところ整備されていない。
特殊勤務手当 令176号により、特殊勤務に対し月額5,200キープ(短期的な任務については日額200キープ)の手当の支給が定められている。
講師手当 令176号により、大学、研究所及びその他の施設に置いて、講義を担当する公務員に対し、時間数による手当の支給を定められている。大学以上のレベルを対象とする場合には1時間あたり2,000キープ、中等専門教育レベルでは1,500キープ、一般教育及び初等専門教育レベルでは1,000キープとなっている。
在外勤務手当 在外公館勤務や外国への派遣を命じられた公務員に対しては、当地の生活費に見合うだけの海外給が支給され、住宅も政府の借り上げとなる。
議員職手当 令176号により、国民議会議員に就任した公務員は、その月額給料が50,000キープ以下であった場合、当該給料に代えて月額50,000キープの議員職手当が支給されることになっている。逆に月額給料が50,000キープ以上であった場合は、その公務員は議員職手当ではなく現行の給料が支給されることとなる。
【生活給】
生活費調整手当 現行の給料表は1994年以来見直しが行われていないため、インフレに対応できなくなっている。そのため1996年より大統領以下全ての公務員に対して5,000キープの調整手当の支給が実施された。さらに1997年には3,300キープが上乗せされ、総額8,300キープの手当が全公務員に支給されている。
教育手当 18歳以下の子を有する公務員に対し支給されるもので、1996年及び1997年にそれぞれ1,000キープ引き上げられ、現行では月額4,500キープが支給される。(但し第2子までに限られる)
この手当は、公務員社会保障基金から年金の支払いを受けられない公務退職者に対しても、引き続き支給されている。
但し、公務員の配偶者が月額30,000キープ以上の収入を得ている場合には、この手当は半額に減額される。
配偶者手当 配偶者が無職である公務員に対して、月額5,000キープが支給される。
【その他給】
国内出張手当 国内において出張を命じられた公務員に対し、日当と宿泊手当が支給される。日当日額は6,000キープであるが、宿泊手当は、大臣クラスで25,000キープ、局長・部長クラスで15,000キープ、その他のクラスでは12,000キープとなっている。
時間外手当 令171号により、運転手、税関職員、税務職員、技術員、医療従事者等の職種に限って時間外勤務手当が支給されている。18時から22時の間の勤務については1時間につき基本給の150%、22時から翌朝6時の間の勤務については基本給の200%となっている。現在のところ事務職員は対象になっていない。
昇給・昇格
 ラオス公務員の昇給・昇格の機会は勤続年数によるものがほとんどですが、勤務成績優秀等の理由で実施されることもあります。格付における昇給は、通常に勤務を続け何ら懲戒処分を受けなかった場合、2年に1号ずつ昇給するものと、勤務成績の評定に基づき昇給するものがあります。また昇格についても一定の勤務年数に基づき昇格するものと、試験合格に基づき昇格するもがあり、それぞれ次の条件を満たさなければならないとされています。

勤務年数に基づく昇格
現在の級の15号を最低3年以上経ていること
勤務成績が良好であり、所属機関の昇格提案が適切なものであること
所属機関の格付委員会の承認を得ていること
昇格試験受験資格
 昇給・昇格ともに対象とされる職員のリストは、昇進委員会(各地方レベルの格付委員会メンバーにそのレベルの大衆組織の代表及び財務部門の代表が加わった委員会)により審議・承認され、上位機関へと提出されます。
現在の級の少なくとも第8号以上であること
勤務態度が熱心であり、昇格試験受験への強い意思を表明していること
業務のために昇格が必要であること
異動
 公務員の異動は次の3つの場合に認められています。
業務の必要性による異動で、採用を決定している組織により承認を受けていること
公務員の要求による異動で、上位機関により承認を受けていること
懲戒処分による異動
解職
 公務員の解職は次の5つの場合に認められています。
公務員総数の削減による解雇
公務員の定年による退職
退職金・年金の受給資格を満たしていない公務員に対して、採用している組織が一度限りの退職手当の支給を承認した場合の退職
組織の解散及び職員数の削減による解雇
懲戒処分による免職
組織の解散及び職員数の削減による解雇の場合、政府は該当職員に対し新しい勤務先を提供しなければならないが、不可能な場合は一度に限り手当が支給されることとなっている。
定年
 一般的に退職年齢は男性で60歳、女性で55歳となっています。この年齢に達している場合でも必要に応じて政府は特例を設けることもできます。
懲戒
 全ての公務員は等しく法律及び公務員に関する規則を遵守しなければならず、その品行については公務の内外双方において責任を負わなければならないとされています。公務員が法律及び公務員に関する規則を犯したときは、懲戒処分が課せられるとともに場合によっては民法上及び刑法上の罪に問われることがあります。
 公務員に対する懲戒処分には以下のようなものがあります。
警告
人事調書への特記
号昇進の一年又は二年の停止
異動
降格
手当が支給されない免職
懲戒処分を審議・承認する懲戒委員会は、下記のとおり省と州のレベルに設置されている。(省及び省と同格の組織レベル)
大臣又はその職務代理者(委員長)
組織人事担当部の代表(副委員長)
党組織人事委員会の代表
懲戒処分対象者の所属局又は課の長
党大衆組織の代表
(州レベル)
州知事、市長又はその職務代理者(委員長)
事務所組織人事担当部の代表(副委員長)
州レベル党組織人事委員会の代表
懲戒処分対象者の所属局又は課の長
州レベル党大衆組織の代表
公務員社会保障制度
 首相令第178号(1993年11月30日)により公務員のための社会保障制度が設立され、翌年には公務員社会保障基金が設立されました。事業は、疾病・出産・労働災害・退職金・年金・死亡時の保障等、幅広い範囲にわたり実施されています。公務員の給料から基本月額の6%が大蔵省において差し引かれ、この基金へ積み立てられていますが、現在は総支出額の3分の1を満たしているにすぎないため、基金の大きな財源は今のところ国家予算からの補助金となっています。
医療費保障
 公務員及び年金生活者とその配偶者及び18歳以下の子が対象となっています。薬剤・健康診断・検査等にかかる費用については基金が半額負担を行いますが、労働災害の場合は基金が全額負担します。国立病院の部屋代・食事代・その他の医療サーピスは、保健省が全額負担することになっています。但し首相令第52号(1995年6月20日)及び保健省訓令第2635号(1995年12月12日)により新制度が整備されつつあり、公務員及び年金生活者とその配偶者及び子、僧侶、学生、その他社会的援助を必要とする人々の医療費は、新制度発効後は全額免除になる予定です。
定年補償
 公務員が退職金及び年金を受け取るための受給資格は以下のとおりである。
男性60歳、女性55歳であること
最低25年公務に就いていること
社会保障基金に積み立てを行ってきたこと
但し、1975年以前の革命に参加した者や5年以上特殊勤務に就いていた者の受給資格は、「男性55歳、女性50歳であること、最低20年以上公務についていること」とされています。
退職手当
 受給資格を有する公務員が退職する場合、(退職時の給与月額の15%×勤務年数)が支給されます。
年金
 受給資格を有する公務員が受け取ることの出来る年金額は、革命への参加実績により下記のとおり分類されています。
区分 勤務年数 年金支給額(退職後毎月)
(退職時の月額給与に対して)
1954年以前に革命に関わった公務員 20年以上 100%
旧体制下から引き続き勤務している公務員 25年以上 90%
旧体制時の勤務年数は3年
1954年以降に革命に関わった公務員 20年以上 90%
5年以上特殊勤務に就いた公務員 20年以上 90%
その他の公務員 20年以上 (勤務年数+5)%
年金一時金
 受給資格を有しない公務員の退職に際しては、退職時の給与月額1ヶ月分に退職時の給与月額の(75+勤務年数)%と、子女教育手当一年分を加算した金額が支給されます。
その他の保障
 身体障害者保障、労働災害補償、死亡保障、慶弔金の支給等があります。
参考資料と引用:日本国外務省 (財)自治体国際化協会
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